「レザーや革製品って使えば、少しずつ汚れが目立ちますよね」
「革の手入れに必要な道具って、専用のものじゃないといけないの?」
牛など動物性由来のものや合成皮革などの「革」を使用して仕立てられたカバンや財布、靴に付いた黒ずみやカビって拭いても擦ってもなかなか落ちませんよね。
しかし、革に付いた汚れもカビもきちんと手入れをしてあげれば、新品同様の美しさを取り戻します。
そこで今回は、革製品に付く汚れの正しい落とし方と手入れ方法について解説していきます。
【この記事を読んでわかること】
- 革製品の汚れの原因
- 汚れ落とし手入れに必要な道具
- 汚れの落とし方
- 汚れを落とした後の仕上げ
- 革製品を取り扱っていく上での注意点
- 革製品の「育て方」
正しい汚れ落としの方法と定期的に行う手入れの方法を身に付ければ、お手持ちの革製品は味わい深いものへと成長して、ずっと長く使っていられます。
革製品の汚れの原因
革製品の汚れの落とし方・手入れの方法を説明する前に、革製品に付く汚れの原因について解説します。
革表面に見られる黒ずみの原因は主に「皮脂」
レザーや牛革を使用した「革製」のカバンやベルト、財布など手で触る機会が多いこれら製品に見られる汚れは主に、手からにじみ出ている「手汗」や「手垢」などによる「皮脂汚れ」が原因です。
1回の接触で大きな変化は見られませんが、数を重ねていくうちに汚れが蓄積して接触面が多い場所ほど黒ずみや色あせが起こります。
特に接触回数がダントツで多い革製の財布やスマホケースでは、これら汚れが生地表面に出ています。
また黒の革製品では汚れが目立たなくて気にしない方も多いですが、汚れが蓄積していることに変わりはないので、早いうちから定期的に手入れをしましょう。
手保存場所が悪ければカビが発生する
革製品の汚れは「皮脂汚れ」が原因で起こる「黒ずみ」や「色あせ」だけではありません。
革製品を保存しておく環境の通気性が悪く、多湿高温の場所であれば、革表面に「カビ」が発生します。
特にシューズボックスなど密閉された空間に、革製品を保存しておくと発生します。
カビの発生はあらゆる革製品で見られます。特に6月の梅雨時は革製品にとって警戒すべき月ともいえるでしょう。
革製品の手入れに必要な道具
以下は、革製品の汚れ落としを行っていくにあたって必要な道具です。
【用意するアイテム】
- 革用のクリーナー
- 革用の保護クリーム
- 革用消しゴム
- ブラシ(馬毛ブラシ)
- 柔らかい布(クロス)
- 防水スプレー
上記6つを使用して革製品の汚れを落としていきます。
以下はアイテム別での注意点です。
革用のクリーナー
汚れ落としに使われる「革用クリーナー」には、中性とアルカリ性の2種類があります。
汚れを落とすなら洗浄力が強いアルカリ性のクリーナーを使うべきですが、革本来の色も落とす可能性があります。
革本来の色合いをキープするなら、中性の革用クリーナーを使用しましょう。
保護クリーム
汚れを落とした後、革製品の色や艶、傷や汚れから製品を守る目的で使用します。
クリームの色は、革の色に合わせて選ぶのがポイントです。
革製品の汚れの落とし方
ここからは革製品に付いた汚れの落とし方について解説します。
革製品に付いた汚れ落としの流れをまとめると、以下の流れとなります。
【革製品の汚れ落としの流れ】
- ブラッシング
- クリーナーの塗布※1,2
- 乾いたクリーナーがベタつく場合は、乾拭きで余分なクリーナーを拭き取っていく
- 製品全体にクリームを塗布していく
- クリームが乾燥したら再度ブラッシング
- ブラッシング後に一度乾拭きを行う
- 総仕上げで防水スプレーを2回吹きかける
※1.汚れによっては消しゴムかけをしてからクリーナーを塗布する
※2.カビ落としでは、クリーナーではなく水気を切った布で拭き取っていく
それでは上記流れに沿って1つずつ解説します。
革製品の汚れ落としは「ブラッシング」から
革製品の汚れを落とす前に、必ず革製品の表面についているゴミやホコリをブラシで落とします。
この時、ブラッシングでは力いっぱい擦るのではなく、生地表面をなでるようにゴミやホコリを落とすのがポイントです。
ブッシングの工程で使用するアイテムは必ずきれいなものを使用しましょう。
また、手入れ前に一度手も洗っておきましょう。必要に応じて革手袋をして下処理に入るのもありです。
革製品の汚れの落とし方(黒ずみ編)
ブラッシングを終えたら、次は生地表面に付いた黒ずみを落としていきます。
1.革用クリーナーの塗布
ブラッシングを終えた革製品の汚れ部分に、革用クリーナーを塗布していきます。
この時、汚れを落とそうと強く擦ると、生地そのものを傷つけてしまいます。
ブラッシング同様、優しく撫でるように塗布していくのがコツです。
2.塗布したクリーナーが乾いたら、革用クリームを塗布する
塗布したクリーナーが乾いたら、きれいなクロスまたはやわらかい布で、革用クリームをすくって革製品全体にまんべんなく塗布していきます。
塗布したクリームが乾いたら、黒ずみの汚れ落としは完了です。
革製品の汚れの落とし方(ボールペンのインク)
財布やカードの収納アイテムとして革製品を使用していると、カード裏に署名に使用したボールペンやサインペンのインクが付着していることがありますね。
次は「ボールペンやサインペンのインク落とし」の手順です。
1.汚れを革用の消しゴムで落としていく
ボールペンやサインペンなどのインクが原因でできた黒ずみには、革用の消しゴムを使用して落とします。
この時、消しゴムの角を使用して落としていくのがポイントです。
消しゴムでこすり落としていけば、生地表面に消しカスが溜まっていきますので、適宜払い落とします。
汚れを落とし終えたら、再度ブラッシングします。
2.革用クリーナーの塗布
消しゴムを使用しても、まだ汚れが目立つようであれば、革用クリーナーを汚れ部分に塗布していきます。
3.革用クリームの塗布
クリーナーが乾いたら、革用クリームを塗布して製品を保護していきます。
クリームが乾いたら汚れ落とし完了です。
また消しゴムかけの段階で汚れが落ちた場合は、クリーナー掛けを省いてクリームの塗布に移って問題ありません。
革製品の汚れの落とし方(カビ落とし)
次は多湿高温な環境で保存していた、雨などで濡れたにもかかわらず手入れをせず放置していたことが原因で発生した「カビ」を落とします。
カビにとって革製品の生地表面は、豊富な餌に恵まれた温床です。
特に「多湿高温」な梅雨時は、革製品にとって最悪な時期です。
以下はそんなカビを効率的に落とす方法です。
1.水気を切った布でカビをふき取っていく
手始めに水気を切った布で、革製品表面に発生したカビを拭き取ります。
この時、カビを擦り取るのではなく、「染み抜き」の要領で軽く表面をたたきながら拭き取るのがポイントです。
また汚れ落としで使う「革用クリーナー」は、カビにとっての栄養価の高い餌となりますので、カビ落としの場では使用しません。
また頑固なカビには、綿棒にアルコールを染み込ませてカビ表面に塗布していく手もありますが、製品の色を落としたり、最悪シミになる恐れがあります。
2.乾燥作業
カビを拭き取ったら、風通しがいい日陰で革製品を乾燥させます。
この時、「日向」に置くと、生地表面が日焼けしてしまう恐れがありますのでご注意ください。
3.クリーナーの塗布
革製品が乾いたら、クリームを塗布してカビや汚れから製品を保護していきます。
塗布したクリームが乾燥したら、カビ落としは完了です。
汚れを落とした後の仕上げ
革製品の生地表面に付いていた汚れやカビを落として、クリームを塗布すれば、汚れ落としは完了となります。
しかし、これではまた同じ状態になる可能性が高いです。
以下は最後の仕上げとして行うものです。
1.ブラッシング
汚れ落とし後に塗布したクリームが乾いたら、再度ブラッシングをしていきます。
ここでは、乾燥を待っている間に付着したホコリやゴミを落とすために行います。
2.乾拭き
ブラッシングを行った後は、余分やクリームとブラッシングでは落としきれなかったホコリやゴミを拭き取っていきます。
3.防水スプレー
乾拭きを終えたら、革製品にゴミやホコリがないかを確認して、付いていなければ防水スプレーをして吹きかけていきます。
防水スプレーをしたら、一度自然乾燥するまで待ちます。
乾燥したらもう一度防水スプレーを吹きかけて再度乾燥させます。
2度による吹きかけが完了したら、革製品の仕上げが完了です。
革製品取り扱いの注意点
ここからは革製品を取り扱っていく上での注意点です。
手入れは定期的に行うこと
革製品に汚れが付いたら、その日のうちに落としておくのがベストです。
しかし、すべての汚れをその日のうちにすべて落とすのは生地表面を傷めるほか、逆に劣化そのものを速めてしまう恐れがあります。
なので、革製品の手入れを行う頻度としては月に1,2回を目安に行うといいでしょう。
革製品の保存環境はこの条件下であること
人によって革製品を使用する頻度が高い人もいれば、時期や場面に応じて革製品を使用する方もいます。
以下は、革製品を保存するときの注意すべき環境です。
多湿で風の通りが悪い場所
革製品は、湿気に弱い特徴を持っています。
特に湿気がこもりやすい押し入れや物置、シューズボックスなどは風通しも悪いことからカビの温床となる可能性が高いです。
なので、定期的に開けて中の空気を入れ替えましょう。
また空気の入れ替えを行うと同時に、ブラッシングや保湿を行って状態をキープしましょう。
直射日光、乾燥に注意
革製品にとって、直射日光に含まれている紫外線は天敵です。
理由は、紫外線によって革表面が日照焼けするほか、色あせや色落ちを引き起こしかねないためです。
また日光にさらすことで、潤いが失われていき、次第に生地表面にヒビが入って崩れていきます。
革製品を乾かす際は、風通しがいい日陰で乾かすのがいいでしょう。
代用品でも手入れはできるがリスクは大きい
革製品の汚れ落としや手入れは専用の道具を使用して行っていくのが長持ちの秘訣です。
しかし、中には、専用の道具を持っていないという方もいるでしょう。
専用のアイテムがない場合は以下のものを代用してみるといいでしょう。
【代用品アイテム】
- 中性洗剤※使用するときは水で薄めること
- ハンドクリーム
の2つで革製品の汚れ落としを行うことができます。
ただし、これらはあくまで「代用品」です。専用のアイテムじゃないので相応のリスクを背負う必要があります。
たとえば、「中性洗剤」を用いる場合、水で何倍にも薄めてから汚れに塗布して落としていきますが、この時製品によっては「シミ」を作ってしまう恐れがあります。
ハンドクリームは、汚れ落としを済ませた後に塗布するクリームの代用として使用できますが、中性洗剤同様、製品によっては「シミ」を作る恐れがあります。
これら代用品を使用していく際は、製品の目立たない部分でパッチテストを行うといいでしょう。
革製品も「色あせ」「色移り」「色落ち」を起こす
革製品は「顔料」や「染料」を使用して色染めを行っています。
そのため、色染めに用いられたものによっては水濡れや摩擦によって色落ちや色あせなどを起こす可能性があります。
これらを完全に防ぐ方法はありません。
しかし、定期的に保湿などの手入れを行うことや、水濡れを起こした際はすぐに水気をふき取るなど、まめな手入れをしていくことで「色落ち」や洋服への「色移り」を防ぐことは可能です。
万が一、洋服に革製品の色が移った場合は、その日のうちに洗濯してしまいましょう。
革製品の手入れは「育てる」ことを意識する
最後は革製品を取り扱っていく上で大切な心掛けです。
革製品の楽しみ「経年変化」
革製品を取り扱っていく上での醍醐味は、「経年変化」による製品の変化を楽しむというものです。
道具というものは使えば使うほど劣化していき、ボロボロになって使えなくなりますが、革製品は使えば使うほど生地が柔らかくなって、使いやすいものへと変化します。
革製品を使うことは、「革を育てる」ことです。
つまり、革を育てることによって、革製品は使い勝手のいいものへとなります。
そのためにも定期的な手入れが、革製品では欠かせません。
使って手入れをすることで革製品は育っていく
革製品は、使用して定期的に手入れをすることで成長していきます。
具体的にどのような変化がみられるのかというと
- 生地の色の変化
- 艶色
- 革表面の滑らかさ
- 形や重さの変化
の4つが革製品では見られます。
いずれも定期的に手入れをしたことで起こせる変化です。
ただし製品によっては、仕立ての加工段階で行われる「なめし」や「顔料加工」などによって変化しない物もあります。
とはいえ、変化しない革製品は革製品じゃありません。
変化しないものには、その製品ならではの良さというものがあります。
まとめ~革は汚れ落とし・定期的な手入れが必須~
以上が革製品の汚れの落とし方、手入れ方法についてでした。
今回の内容をまとめると以下の通りになります。
- 革製品の汚れは主に「皮脂汚れ」や「インク」からなる「黒ずみ」、劣悪な保存環境で発生する「カビ」の2種類
- 汚れ落としの基本はブラッシングから始めること
- 汚れ落としには「革専用のクリーナー」を使用する
- カビ落としは、水気を切った布で拭き取っていく
- 仕上げは革用クリームを塗布してから、防水スプレー掛けをして完了
- 保存する際は「湿気」「乾燥」「日光」に要注意
- 革製品の手入れは、「革を育てる」ことを意識して行う
革製品は人間の肌同様にデリケートなものであり、定期的な手入れを必要とする特殊素材です。
たとえば、潤いを失えばヒビが入り、外側から徐々に崩れて劣化が進んでいきます。
この劣化を防ぐためにも、定期的な手入れとなるブラッシングや保湿を欠かさず行うことが大切です。
ずっと長く使っていられる製品だからこそ、愛を持って定期的に手入れをしてあげましょう。
手入れをした数だけ、革製品は育っていきます。