表面に艶がある本革や合皮、レザー製の靴とは違い、生地表面にざらつきがありながらも温かみがあるスエードの靴。
生地表面が起毛している分、本革の靴とは違って汚れが付きやすいので、日々のお手入れが欠かせません。
一度お手入れを怠れば、起毛素材そのものの魅力や表情を損ねてしまいます。
起毛しているから、他の革製品とは勝手が違い、お手入れも自宅では難しいものと思われますが、正しい手順を踏んであげれば自宅で簡単にお手入れできます。
そこで今回は、自宅でできるスエードの簡単お手入れ方法と汚れが付いたときの落とし方、取り扱う上で気を付けておくことをご紹介します。
【この記事を読んでわかること】
- スエードの基本情報
- 購入したらすぐにやっておくこと
- 自宅でできるお手入れ・洗濯方法・乾かし方
- お手入れ・洗濯をする際の注意点
- スエードのお手入れに使えるオススメアイテム3選
スエードの基本情報
ここでは、スエードの基本情報と購入後すぐにやるお手入れをご紹介します。
スエードは『起毛革』に位置する革製品
「スエード」は、紙やすりなどを用いて牛や羊などの皮の裏地繊維を起毛させた革製品を指します。
同じやすりがけで「ヌバック」というものがありますが、こちらの場合は表面がツルツルしている革生地の表面にやすりがけをしたものを指します。
スエードは皮の裏側をやすりがけすることで起毛させていますので、皮生地の裏側独特の光沢と温かみがあります。
この起毛を薄く削れば削るほど強度が落ちますが、光沢が増してキレイな起毛になります。
スエードを購入したら必ず防水スプレーを塗布すること
スエード製の靴を購入したら、必ず防水スプレーを2~3回塗布してから使用しましょう。
前述したようにスエードは紙やすりで表面を削れば削るほど、キレイな起毛を見せてくれますが、汚れが付きやすいです。
汚れ防止のためにも、使用前に防水スプレーを塗布しておけば、泥跳ねや水シミ防止になります。
当然、防水スプレーの効果は使用毎に低下していきますので、使用後はブラッシングをして再度塗布してあげることで汚れから靴を守れます。
これを最初にするかしないかで、今後の汚れの付き具合が大きく変わってきます。
同様の理由でヌバックや他の革製品も使用前に防水スプレーを塗布してあげましょう。
スエードのお手入れ・洗濯方法
ここでは、自宅でできるスエードのお手入れ・洗濯方法をご紹介します。
使用するアイテム
スエードをお手入れする際は以下のアイテムを使用します。
【お手入れで使用するアイテム】
- 毛ブラシ
- スエード専用ゴムブラシ
- 歯ブラシ
- 砂消しゴム
- 防水スプレー(撥水スプレーでも可)
- シューキーパー(なければ新聞紙)
上記6つのアイテムを使用して、お手入れをしていきます。
スエードのお手入れは基本的に「ブラッシング」で汚れを落とせます。靴底の溝やスエードと靴底の境目は使用済みの歯ブラシを用いれば掻き出せます。
ただし中には、ブラッシングでは落とせない汚れもあります。
そのような場合は、砂消しゴムまたはスエード専用消しゴムを用いて汚れを削り落とします。
しかし、中には表面を削っても落とせない汚れが見られます。
そのような場合は、以下のアイテムを使用してキレイにします。
【洗濯で使用するアイテム】
- 専用クリーナー(スプレータイプ)
- シャンプー
- キレイな布2枚
- スポンジ
- 洗面台
上記5つのアイテムを使用して落としていきます。
スエードも革製品の仲間である以上、革専用のクリーナーを用いれば、簡単に水シミなどの汚れを落とせます。
お手入れの基礎:ブラッシング
スエードのお手入れは、毛ブラシとスエード専用ゴムブラシの2種類のブラシを使い分けてお手入れしていきます。
【ブラッシングの手順】
- 毛ブラシでスエード製品全体をブラッシングする。
- 靴底や生地の境目は歯ブラシを用いて汚れを履き出していく。
- スエード専用ゴムブラシを用いて毛ブラシでは落としきれなかった汚れを削り落としながら毛並みをほぐしたり起毛させていく。
- 再度毛ブラシでブラッシングする。
- 仕上げに防水スプレーを2~3回塗布してシューキーパーを入れて乾かす。
これでスエードの基本的なお手入れは完了です。
- 毛ブラシで落とせない汚れは、砂消しゴムを用いて落としてもいい。
- 最初のブラッシングは毛並みに逆らって行うこと。
- 防水スプレーを塗布するときは、薄く均一に塗布すること。
- 一度塗布したら乾燥するまで待つこと。
- お手入れ後はシューキーパーまたは購入時についてきた保型芯を詰める。
水シミができたら専用のクリーナーで落とす
防水スプレーを塗布して水気や汚れから、スエードを守っていても気づないうちに水シミやスプレー液による液シミができています。
このようなシミ汚れは、砂消しゴムを用いても落としきれませんので、スエード専用のクリーナーを用いて落としていきます。
【シミ汚れの落とし方】
- 毛ブラシでスエード製品全体をブラッシングする。
- スプレータイプの専用クリーナーを均一に塗布していく。
- 濡れた布でクリーナーを拭き取っていく。
- 乾いたらスエード専用ゴムブラシで毛並みを起毛させる。
- 再度毛ブラシでブラッシングをする。
- シューキーパー等を詰めて風通しのいい日陰で乾かす。
これでスエードにできるシミ汚れのお手入れは完了です。
- 最初のブラッシングで泥汚れや砂ホコリを払うこと。
- 水拭きしたスエードを乾かすとき、ドライヤーなどの温風を用いないこと。
- お手入れ後は防水スプレーを2~3回塗布して再度乾かせばお手入れ完了。
スエードにカビが!そんな時は丸洗い
スエードも革製品である以上、風通しの悪い場所や高温多湿な場所で保管していると、生地表面に黒カビが発生します。
カビを落とす時に専用クリーナーを用いると、かえってカビの栄養源になるので使用は控えましょう。
また砂消しゴムで削り落としてもカビの根が残っている限り再発します。
カビの増殖を抑えるためには、スエードを丸洗いするのがおすすめです。
【カビ落としの手順】
- 毛並みに逆らってスエード製品全体をブラッシングしていく。
- 濡れた布で製品全体を湿らせていく。
- スポンジにシャンプーをワンプッシュしてよく泡立たせる。
- スエード全体を優しく擦り洗いしていく。
- カビが落ちたら、水で濡らしたスポンジで洗剤を吸い取るように拭き取っていく。
- 洗剤を拭き取ったら、乾いたタオルでスエード全体を包み込んで水気を切っていく。
- 風通しのいい日陰で乾かす。
- 乾燥したらスエード専用ゴムブラシで毛並みを起毛させる。
- 再度毛ブラシでブラッシングをする。
- 防水スプレーを2~3回塗布して再度乾かす。
これでスエードに生えたカビ落としは完了です。
- ぬるま湯を張った洗濯桶にスエードを入れると、水シミを作る原因になるので、必ず濡れた布で表面を濡らすこと。
- カビ落としに使用するシャンプーは日ごろ使用しているものでいい。
- 洗剤を落とす時は濡れたタオルで洗剤を吸い取ってもいい。
- シミ汚れの原因になるので必ず洗剤は落としきること。
- 乾かすとき、新聞紙を詰めると早く乾く。
- この方法はシミ汚れを落とす時にも使用できる。
スエードのお手入れ・洗濯をするときの注意点
ここでは、スエードのお手入れ・洗濯を行う際の注意点をご紹介します。
雨で濡れたり、丸洗いをしたらすぐに乾かす
スエード製品が雨で濡れたり、カビ落としのために丸洗いを行ったら風通しのいい日陰でしっかり乾かしましょう。
水気を帯びたまま保存してしまうと、生地表面に水シミや黒カビを作ってしまう原因になります。
素早く乾かす方法として、丸めた新聞紙を靴の内側一杯に敷き詰めて、風通しのいい場所においてあげるだけで乾きます。
この時、ドライヤーや乾燥機などの速乾性があるものを使用すると型崩れの原因にもなりますので、乾かすときは自然乾燥がおすすめです。
防水スプレーは使用毎に1,2回は塗布すること
スエードやヌバックは、革製品の中でも特に汚れが付きやすい製品です。
そのため、少しでもお手入れの頻度を軽減するためにも使用毎に防水スプレーまたは撥水スプレーのいずれかを塗布してあげましょう。
どちらも水気や汚れを寄せ付けない効果がありますが、時間とともに効果か薄れていきますので、使用前に必ず塗布してあげましょう。
また塗布する前に1度ブラッシングしてあげることで、使用した時に付いた汚れを払い落とせます。
お手入れ後はシューキーパーで形をキープ
スエードのお手入れを終えたら、製品の形にあったシューキーパーを入れて形をキープしましょう。
シューキーパーを入れることで、型崩れ防止はもちろん防菌・消臭効果が得られます。
もし自宅にシューキーパーがない場合は、購入時に入っていた保型芯を詰めても型崩れ防止になります。
保管するときは高温多湿な場所は避けること
スエードも革製品である以上、シューズボックスなど風通しが悪い高温多湿の場所にずっと保管しておくと、表面にカ黒カビができます。
カビにとって高温多湿な場所は、浸食しやすい温床です。
たとえ、防水スプレーを塗布していても、カビは繁殖し続けます。
カビの繁殖に歯止めをかけるためにも、定期的にシューズボックスを開けて換気したり、製品の中に新聞紙を敷き詰めるなどしましょう。
また定期的に陰干ししてあげるのもおすすめです。
この時、日向で天日干しをすると、生地が変色しますのでご注意ください。
お手入れに便利!オススメアイテム3選
ここでは、スエードのお手入れをより簡単にしてくれるおすすめアイテムをご紹介します。
スエード専用の消しゴム
まずは「スエード専用の消しゴム」です。
スエードに見られる汚れを落とす時は、「スエード専用の消しゴム」があると便利です。
スエードに見られる汚れは、生地表面を削ることで清潔に保てます。
さらに、水洗いする頻度も減らせますので、おすすめです。
またスエード専用の消しゴムが高い場合は、百均などで購入できる砂消しゴムでも同じ用途で取り扱えます。
スエードブラシ
革製品で使用している毛ブラシでも、スエード表面に付いた汚れやホコリを払い落とせますが、ゴムブラシを用いたブラッシングの方が汚れ落としに適しています。
その中でも、コロンブスより出ている「スエードブラシ」には4種類ものブラシがついています。
ブラシの使い分けが手間に感じる方は、この「スエードブラシ」を使ってブラッシングするのがおすすめです。
これ一本で「ブラッシング」が解決します。
保革もできる防水スプレー
スエードも革製品の仲間ですので、「保革」が必要です。
ただし、スエードは他の革製品とは違って、乳化性のクリームタイプで塗布しても繊維の奥まで浸透しません。
スエードの保革を行う場合は、スプレータイプのものを使用するのがおすすめです。
塗布も全体に薄く均一に吹きかければ完了します。
さらに防水加工もできるのでおすすめです。
- 革が乾燥している場合のみ保革成分配合のものを使用するのがおすすめ。
- 防水スプレーの塗布は1週間に一度塗布するか、雨の日に履いた翌日乾燥した時にするのがおすすめ。
まとめ~日々のお手入れで長く愛用できる~
以上が、自宅でできるスエードの簡単お手入れ方法と汚れが付いたときの落とし方、取り扱う上で気を付けておくことをご紹介でした。
今回の内容をまとめると以下の通りになります。
- スエードは皮の裏生地にやすりがけを施した革製品
- 使用前に必ず防水スプレーを塗布すること。
- お手入れはブラッシング、クリーナーがけ、水洗いでキレイにする。
- 部分的な汚れには消しゴムかけがおすすめ。
- お手入れ、洗濯後は風通しのいい日陰で乾かす。
- 仕上げの防水スプレーは必ず塗布すること。
- 革製品である以上、高温多湿な場所は避けること。
- 水に濡れたらしっかり乾かすこと。
- 乾かすときは自然乾燥を基本に、新聞紙などを詰めると早く乾く。
- ドライヤーや乾燥機は使用しない。
スエードも革製品である以上、使用毎のお手入れが欠かせません。
その日にスエードの靴を履いたら、新聞紙を内側に敷き詰めて中を乾燥させつつ表面をブラッシングしてあげましょう。
これを欠かさず行うことで、スエードの靴を長く愛用できます。
スエードや他の革製品も同様、使用毎にブラッシングをしてあげるだけでも今後長く履いていられます。
革製品のお手入れは、「ブラッシング」で成り立っていると言ってもいいでしょう
起毛素材だからお手入れが難しいように見えますが、基本的なお手入れは他の革製品と分かりません。
ブラッシングだけしかやってこなかった方も、ぜひ一度今回ご紹介した方法を試してみてください。
きっと今までとは比べ物にならない、仕上がりになります。