「剣道着の洗濯って着たらすぐの方がいい?」
「部内でよく着回している人がいるけど不衛生じゃないの?」
剣道部に所属するお子さんがいる家庭や剣道を嗜んでいる方にとって「剣道着」は、防具に次いで大切なユニフォームです。
ところで、日々激しい稽古に励む剣士の皆さんは、稽古の後、着ていた剣道着・袴をどうしていますか?
たっぷり汗を吸ってしまったから自宅に持ち帰って洗濯する方もいれば、風通しのいい場所で乾かす方がいます。
どちらの方法をとっても、間違いではありません。
しかし、剣道着・袴を仕立てるうえで使用した素材によっては、見栄えそのものをダメにしてしまう恐れがあります!
そこで今回は、剣道着・袴の正しい洗濯方法・干し方を素材別にご紹介します。
【この記事を読んでわかること】
- 剣道着・袴の「種類」
- 素材別に行う洗濯方法・干し方
- 洗濯するときの注意点
- 剣道着・袴を長持ちさせる方法
剣道着・袴を洗濯する前に知っておくこと
ここでは、剣道着・袴の種類と、間違った洗濯方法をしてしまった時、どのような状態になるのかをご紹介します。
剣道着には「種類」がある
剣道着にはいくつかの種類があります。
この「種類」とは、剣道着・袴を仕立てるうえで使用した素材によって、出来栄えや見栄え、シワのでき方、洗濯方法が違ってきます。
【剣道着の種類】
- 藍染の剣道着
- 化学染料・ポリエステル素材の剣道着
剣道着①藍染の剣道着
藍染の剣道着は綿100%で仕立てられており、昔ながらの剣道着です。
藍染の剣道着は、着たり触れたりすると肌に「藍」が付きます。
藍染された剣道着には、3つの効果があります。
【藍の効果・特徴】
- 汗による参加に強い
- 生地を丈夫なものにして長持ちする
- 抗菌作用があり、あせもや多々連などの肌トラブル防止
- 消臭効果がある
重量感溢れるこの剣道着を試合や段審査で着て行く剣士が大勢います。
ただし藍染の剣道着は、「洗濯が難しい」という難点を抱えています。
剣道着②化学染料・ポリエステル素材の剣道着
化学染料・ポリエステル素際で仕立てられた剣道着は、ジャージ風剣道着として剣道を始めたばかりの剣士や学生剣士の間で着られています。
ジャージ風剣道着はスポーツウェア感覚で着られますので、難しい工程を踏むことなく、簡単にお手入れできます。
【ジャージ風剣道着の特徴】
- 通気性が高く、汗をかいてもサラサラ
- 薄手なので、道着内に籠った熱を逃がしてくれる
- 色落ちの心配がなく、洗濯機で簡単に洗え
- 速乾性が高い
袴には「種類」がある
剣道着に種類があるように、袴にも種類があります。
【袴の種類】
- 綿袴
- テトロン袴
袴①綿袴
綿袴は昔ながらの袴であり、剣士の立ち姿を美しく見せてくれる分厚い生地をしています。
綿で仕立てられているので、袴そのものは丈夫に仕立てられています。
しかし、正座や膝の曲げ伸ばしの場面が多い剣道では、シワを作りやすいです。
また綿袴にも「藍染」されているものがあります。
藍染されているものを洗濯すれば、色落ちしてしまう恐れがありますので、藍染された剣道着同様、洗濯をするときは要注意です。
【綿袴の特徴】
- 消臭・防虫効果がある
- 抗菌作用がある
- 色落ちしやすいので要注意
- 白の剣道着を着れば、色移りする可能性がある
袴②テトロン袴
テトロン袴は、綿袴と違ってシワになりにくくひだも崩れない画期的な袴です。
素材もポリエステル・レーヨンの化学繊維で仕立てられているので、心置きなく洗濯機で洗えます。
【テトロン袴の特徴】
- 生地が柔らかくて軽い
- 色落ちの心配がないので洗濯機で洗える
- シワやひだの崩れがしにくい
洗い方間違えるだけで剣道着そのものをダメにしてしまう
ここでは、藍染された剣道着・袴をダメにしてしまう洗い方の1例をご紹介します。
【剣道着・袴をダメにしてしまう例】
- 色落ち
- 摩擦
- 変色・脱色
例①色落ち
剣道着・袴を洗濯するときに、一番多いものが「色落ち」です。
特に藍染された剣道着・綿袴を洗濯する時、よく「洗剤」を用いて洗う家庭が多いです。
染料として使用されている「藍」は、洗剤によって繊維から溶け出てしまいます。
これを2~3回行えば、濃かった藍色が薄く見栄えそのものが悪くなってしまいます。
「洗剤を使用しないと汚れは落ちない」という先入観があります。
しかし、藍染された剣道着・綿袴は「抗菌・消臭・防虫」ともに酢くれていますので、洗剤を使用せず洗うのがおすすめです。
例②摩擦
2つ目は摩擦です。
藍染された剣道着・綿袴は、生地同士の擦れやブラシによる擦れに弱く、力を入れずとも擦っただけで色が繊維から剥離します。
特に新品のものほど色が剥離しやすいので、取り扱いには十分注意しましょう。
例③変色・脱色
藍染された剣道着・綿袴では洗剤はもちろん、酸素系漂白剤や重曹を使用すると、変色や脱色を引き起こします。
洗濯・着用前に1度藍止めを行う方もいます。
一時的な色移り防止にはなります。
しかし、間違ったやり方を行えば、劣化や色落ちを促進させる起因にもなりますのでご注意ください。
剣道着・袴の洗濯方法
ここでは、素材別で見る剣道着・袴の洗濯方法・干し方をご紹介します。
洗濯表示の確認
剣道着・袴を洗濯する前に必ず「洗濯表示」と「使用されている素材」の確認を行いましよう。
【洗濯方法早見表】
手洗い | 洗濯機 | |
---|---|---|
剣道着(藍染) | 可能※ | 不可 |
剣道着(ポリエステル繊維) | 可能 | 可能 |
綿袴(藍染) | 可能※ | 不可 |
テトロン袴 | 可能 | 可能 |
※洗剤は使用しないこと
剣道着・袴の洗濯で使用するアイテム
ここでは、剣道着・袴を洗濯するときに使用するアイテムです。
【使用するアイテム】
- 洗濯ネット
- オシャレ着用中性洗剤(漂白入りじゃない物)
- 洗濯桶or洗濯ボウル(なければ洗面台)
- ゴム手袋(藍の色移り防止)
- 厚手のハンガー(道着用ハンガーがあると便利)
上記5つのアイテムを使用して剣道着・袴をきれいにしていきます。
剣道着の洗濯方法
ここでは素材別で行う剣道着の洗い方をご紹介します。
剣道着①藍染された剣道着
藍染された剣道着を洗濯する場合は「手洗い」で洗っていきます。
【洗濯手順】
- 洗濯桶に30~40℃前後のぬるま湯を張る。
- 道着を畳んで、ぬるま湯に浸す。
- 藍の色移り防止でゴム手袋をして、2~3回ほど押し洗いする。
- 水から引き揚げ軽く絞って水気を切る。
これで、藍染された剣道着の洗濯は完了です。
- 洗濯はぬるま湯のみを使用する
- 必ずゴム手袋をすること
- ぬるま湯に浸す時間が長いと、繊維から藍が溶け出るので手短に済ませること
- 洗剤は絶対に使用しない
- 汚れが気になる場合は、「藍染専用の洗剤」を使用すること
剣道着②ジャージ風・化学繊維で仕立てられた道着
次はジャージ風剣道着の洗濯方法です。
こちらは藍染された道着と違って、藍が溶け出たり、肌に藍が付く心配がありません。
また洗濯も手洗い・洗濯機の両パターンで行けます。
【洗濯手順:手洗い編】
- 洗濯桶に3~40℃前後のぬるま湯を張る。
- ぬるま湯にオシャレ着用中性洗剤を入れて、よくかき混ぜる。
- 剣道着を折り畳んで、洗濯液の中に浸す。
- 2~30回押し洗いしていく。
- 洗濯液を捨て、綺麗な水を入れてすすぐ。
- 泡が出なくなったら、水から引き揚げる。
- 洗濯ネットに剣道着を入れたら、洗濯機にセットして脱水を行う。
これで手洗いによる洗濯は完了です。
【洗濯手順:洗濯機編】
- 剣道着を畳んで、洗濯ネットの中に入れる。
- 洗濯槽に他の衣類が入っていないことを確認してから洗濯槽に入れる。
- オシャレ着用中性洗剤を入れる。
- 蓋をして、「手洗いコース」に設定してスタートする。
これで洗濯機による洗濯は完了です。
- 手洗い・洗濯機ともに洗剤は「オシャレ着用中性洗剤」を使用すること
- 漂白剤が入っていない物を使用すること
- 型崩れ防止のため洗濯ネットは必須
袴の洗濯方法
ここでは、綿袴・テトロン袴の洗濯方法についてご紹介します。
袴①綿袴
綿袴は藍染されているので、藍染された剣道着同様「手洗い」できれいにしていきます。
【洗濯方法】
- 洗濯桶にぬるま湯を張る。
- 綿袴を畳んでからぬるま湯に浸す。
- ゴム手袋をして2~3回押し洗いする。
- すぐに水から引き揚げてよく絞る。
これで、綿袴の洗濯は完了です。
- 藍は水に溶けやすいので、2~3回押し洗いしてすぐに水気を切る
- 洗剤は絶対に使用しないこと
- 洗濯するときは、折りたたんでから洗濯すること
袴②テトロン袴
次にポリエステル繊維、レーヨンなどの化学繊維で仕立てられた袴の洗濯方法をご紹介します。
こちらはジャージ風剣道着同様、手洗い・洗濯機の両方を用いた洗濯方法できれいにできます。
【洗濯手順:手洗い編】
- 洗濯桶に3~40℃前後のぬるま湯を張る。
- ぬるま湯にオシャレ着用中性洗剤を入れて、よくかき混ぜる。
- 袴を畳んで、洗濯液の中に浸す。
- 2~30回押し洗いしていく。
- 洗濯液を捨て、綺麗な水を入れてすすぐ。
- 泡が出なくなったら、手押しで脱水していく。
これで手洗いによる洗濯は完了です。
【洗濯手順:洗濯機編】
- 袴を畳んで、洗濯ネットの中に入れる。
- 洗濯槽に他の衣類が入っていないことを確認してから洗濯槽に入れる。
- オシャレ着用中性洗剤を入れる。
- 蓋をして、「手洗いコース」に設定してスタートする。
これで洗濯機による洗濯は完了です。
- 手洗い・洗濯機ともに洗剤は「オシャレ着用中性洗剤」を使用すること
- 漂白剤が入っていない物を使用すること
- 型崩れ防止のため洗濯ネットは必須
- 洗濯機を使用するときは、他の衣類が入っていないことを確認する
洗濯した剣道着・袴の干し方
ここでは、洗濯し終えた剣道着・袴の干し方をご紹介します。
洗濯した剣道着の干し方
洗濯を終えた剣道着を乾かすときは、生地を裏返しにして風通しのいい日陰で乾かします。
剣道着は種類を問わず日光に当たると、変色してしまう恐れがあります。
また乾かすときは部道着専用のハンガーがあると、乾きにくい袖部分をピンッと張って乾きがよくなります。
手元に道着専用のハンガーがない場合は、両袖に直接竿を通して乾かすと効果的です。
また乾かす直前に一度シワを伸ばしてから干すと、乾いたときの見栄えがいいです。
洗濯した袴の干し方
洗濯を終えた袴を乾かす時は剣道着同様、風通しのいい日陰で乾かしていきます。
この時、洗濯バサミがたくさんついている袴専用のハンガーがあると便利です。
もし手元に普通のハンガーしかない場合は、ハンガーを腰部分に合わせ、前の腰紐を後ろの腰板の下の位置で縛って干しましょう。
さらに洗濯バサミで両端を固定してあげれば完璧です。
イメージは、ハンガーに袴を履かせるような感じです。
藍染されている剣道着・綿袴を干す時、藍色に染まったしずくが床に滴ることがあります。
もし、室内で乾かす場合は、真下に新聞紙かブルーシートを敷いておきましょう。
剣道着・袴を洗濯するときの注意点
ここでは、剣道着・袴を洗濯するときの注意点をご紹介します。
洗濯よりも「水分」を飛ばすこと
剣道着・袴は洗濯すればするほど、生地が傷んでいきます。
頻繁に洗濯をしていれば2~3年でボロボロになっていきます。
少しでも長く着ていられるようにするためにも、着用したらすぐ洗うのではなく、道着が吸った汗を飛ばして乾燥させることが長持ちの秘訣です。
不衛生にも思えますが、剣道着や袴を長持ちさせる上では、この方法が1番です。
特に藍染された剣道着・袴は抗菌性、消臭・防虫効果があり、化学繊維で仕立てられた剣道着・袴は速乾性に優れています。
これらの特徴を考慮すると、着用したらすぐに洗濯するよりも、風通しのいい場所で乾かすのが剣道着・袴ともに長持ちします。
洗濯するときは必ず個別で洗うこと
剣士の中には、着回すことに抵抗を感じる方もいるでしょう。
その時は洗濯してきれいにしてあげましょう。
ただし、洗濯するときは必ず剣道着と袴を「個別」で洗うことが大切です。
洗濯ネットに入れていても、ネット越しで互いに生地表面を擦り合わせて傷ついてしまう恐れがあるからです。
また藍染された剣道着・綿袴も同様です。
洗うタイミングはちょっと臭ってきた頃がベスト
剣道着・袴を洗濯するタイミングは、着用してちょっと臭いがしてきたタイミングで洗濯するのがおすすめです。
特に汗をかく夏場であれば、3~5日に1度は洗濯する。汗をかきにくい冬場1~2週間に一度洗濯するのがいいでしょう。
その間は、ハンガーに吊るしてしっかり乾燥させることです。
ワンポイントして、無香料の消臭スプレーを吹きかけてあげると、洗濯の頻度を減らせます。
袴は「折り目」を残すこと
袴を洗濯するときは、折り目(ひだ)に気を付けて洗濯しましょう。
この部分は袴を美しく見せるための大切なものです。
この部分は、テトロン袴であっても大切です。
折り目を残したまま洗濯してあげれば、洗濯後に行うアイロンがけの頻度を減らせます。加えて折れ目がなくなったとき、自分で再現する手間を省けます。
袴を洗濯するときは、必ず畳んで洗濯ネットに入れてから洗濯しましょう。
この1手間をするだけで、型崩れ防止に繋がります。
藍染された剣道着・袴を着る前に藍止めをしよう
藍染された剣道着・綿袴を着用すると、肌に藍が付いてしまいます。
この剣道着・綿袴を水洗いした時、1度の洗濯で藍が落ちて抗菌・防虫・防臭効果が薄れてしまう恐れがあります。
なので、藍を繊維に留めておくためにも、購入したら必ず着用前に「藍止め」を行いましょう。
- 藍止めは酸性のものを使用すること(お酢または藍止め液を使用すること)
- アルカリ性のものを使用すると染料を分解する恐れがある
- 藍止めをするときは必ずゴム手袋をすること
藍止め方法①お酢を使用する
- 洗濯桶にぬるま湯を張る。
- ぬるま湯の割合5に対して、お酢の割合1で入れる。※大さじ1~2杯がベスト
- 酢水が完成したらゴム手袋をして剣道着・袴を浸す。
- 3時間ほど浸したら、酢水を捨てて水気を切って陰干しする。
藍止め方法②藍止め液を使用する
- 洗濯桶にぬるま湯を張る。
- ぬるま湯に藍止め液を入れて、よくかき混ぜる。
- ゴム手袋をして剣道着・袴を混合液の中に浸す。
- 揉み洗いで繊維の奥に染み込ませてあげる。
- 全体に混合液がなじんだら、30分ほど漬け置きする。
- 時間になったら、混合液を捨ててキレイな水で軽くすすぐ。
- すすぎ終えたら、脱水して陰干しする。
藍止め液を使用した場合は、必ず1週間は陰干ししてあげましょう。
この時、1日だけ外で干して、以降は部屋干ししてあげるのがおすすめです。
まとめ~しっかり乾燥させれば清潔感は保てる~
剣道着・袴の正しい洗濯方法・干し方を素材別にご紹介しました。
今回の内容をまとめると以下の通りになります。
- 剣道着・袴は素材に応じて洗濯方法を選ぶ必要がある。
- 藍染されたものを洗うときは、水洗いのみ。
- 間違った洗濯を行うと、色落ちや劣化、型崩れを起こす。
- 化学繊維で仕立てられたものは手洗い・洗濯機による洗濯ができる。
- 藍染されたものを着るときは、藍止めすること。
- 洗濯するタイミングは「少し臭ってきた」ときがおすすめ。
- 着用後しっかり乾燥させることで長持ちする。
剣道着・袴は、一般衣類や他の道着とは違って頻繁に洗濯する必要がありません。
汗をかいているのだから、不衛生だと思う方も多いでしょう。
しかし、剣道着・袴に使用されている「藍」には、抗菌・消臭・防虫効果があります。さらに化学繊維で仕立てられたものは通気性がよく速乾性も優れています。
これらの効果を洗濯して損ねないためにも、頻繁に洗濯するのは愚策といえます。
剣道着・袴を着用したらハンガーに吊るしてしっかり乾燥させてあげるのが、長持ちする秘訣です。
洗濯をするなら、ちょっと臭いがきつくなってきたと感じた時にするのがおすすめです。
また稽古の時は化学繊維の剣道着・袴を段審査や試合のときは藍染の剣道着・袴を着るなど場面に応じて着分けると、もっと長持ちします。