「雨の日に使用したアウターが泥で汚れたけど、洗濯する必要はあるのか?」
「撥水加工がされた衣類も、普通の衣類同様の洗濯方法で洗濯して大丈夫?」
キャンプや登山などのアウトドア、雨の日や雪の日の仕事で着る機会が多いダウンジャケット、傘、ブーツ、アウターには「撥水加工」が施されています。
「撥水=水に強い」というイメージがありますが、汚れてしまったときの洗濯方法を誤ればその効果は低下しても逆に水に弱くボロボロになってしまいます。
そこで今回は、「撥水加工」が施された衣類が汚れてしまった時の洗濯方法・干し方、撥水加工が低下した時、自宅で簡単、撥水加工の方法をご紹介します。
【この記事を読んでわかること】
- 撥水加工と防水加工の違い
- 撥水加工の効果時間
- 撥水加工がされた衣類の洗濯方法
- 洗濯後の干し方
- 洗濯するときのポイント
- 自宅で簡単「撥水加工」の方法
撥水加工の効果とは

ここでは、「撥水加工」と似た加工方法「防水加工との違い」、「撥水加工の効果時間」について解説します。
撥水加工と防水加工の違い
アウターやブーツなどを購入するとき、製品に「撥水加工」また「防水加工」のいずれかが施されていますという説明書きを目にします。
どちらも「水に強い」というのはイメージできますが、具体的な違いを説明できる方は少ないです。
以下はそれぞれの違いです。
撥水加工
「撥水加工」とは、「水を弾く」加工方法です。
具体的には、「撥水基」といううろこ状の突起物をアウターやブーツなどの生地表面にコーティングして水や汚れを弾きます。
「撥水加工」がされている衣類は、生地の縫い目そのものを隙間なく縫い合わせているわけじゃないため通気性・透湿性が優れています。
ただし一度に大量の水を浴びてしまった場合、「撥水基」が寝込んで水を弾けなくなり、生地に水や汚れが浸透します。
防水加工
「防水加工」とは、「水滴を通さない」加工方法です。
「撥水加工」とは違い、水滴を通さないよう隙間なく生地を縫い合わせて水の浸透を防いでいます。
さらに生地の裏には「ラミネート加工」や「コーティング加工」などの水気を通さない特殊加工が施されています。
「水を通さない」という点では、「防水加工」が一枚上手ですが、通気性が非常に悪く、蒸れやすいなどのデメリットを持っています。
撥水加工の効果時間
「撥水加工」の効果時間は、「半永久」ではありません。
効果時間は使用頻度によって大きく異なりますが、「約1ヶ月~3ヶ月のワンシーズン」最長で「1年」は持ちます。
効果を長く持たせるために定期的に加工を施せば、「撥水効果」そのものを高められます。しかし、頻繁に加工を施せば生地を傷める原因となります。
加工を再度施すときは、「ワンシーズン」の始まりに施すのがおすすめです。
また着用頻度が高い衣類は、「ワンシーズン」中に2回施すのがいいでしょう。
撥水加工がされた衣類の洗濯方法

ここからは「撥水加工」が施された衣類の洗濯方法・干し方について解説します。
洗濯表示の確認
「撥水加工」が施されている衣類を洗濯する前に、衣類の裏地についている「洗濯表示」の確認を行います。
「撥水加工」が施されている衣類の多くが「桶印にバツマーク」が付いているものが多いです。これは「家庭での洗濯禁止/水洗い不可」であることを告げています。
このマークがあるものは、クリーニング店に持ち込みましょう。
逆に「桶+手のマーク」が付いているものは「手洗い/水洗い」ができます。
ただし、洗濯機の「手洗いコース」を利用した洗濯は行えません。
使用するアイテム
次に「撥水加工」が施されている衣類の洗濯で使用するアイテムです。
【洗濯で使用するアイテム】
- 洗濯桶orボウル(ない場合は洗面台でも可)
- オシャレ着用中性洗剤or撥水加工洗濯専用の洗剤
- 洗濯ネット
- バスタオル
上記4つを使用して洗濯します。
また「柔軟剤」や「酸素系・塩素系の漂白剤」、「蛍光増白剤」などが配合された洗剤は、撥水加工の効果そのものを低下させるので使用は控えます。
撥水加工がされた衣類の洗濯(手洗い編)
ここからは「桶+手マーク」が表示されている「撥水加工」が施された衣類を「手洗い洗濯」で洗濯する手順について解説します。
【手洗い洗濯の手順】
- 洗濯桶orボウルに40℃のぬるま湯を張る。
- ぬるま湯を張ったら、「オシャレ着用中性洗剤」または「専用洗剤」のいずれかを適量入れてよくかき混ぜる。
- 完成した洗濯液に衣類を浸して押し洗いする。
- 汚れが落ちたら洗濯液を捨てて、きれいな水を入れて泡が出なくなるまですすぐ。
- すすぎ終えたら、バスタオルに包んで水気を切っていく。
これで手洗い洗濯は完了です。
- 汚れが溜まりやすい「襟元」「袖口」は念入りに洗う
- フードやポケットなどは特に注意して、水気を切ること
- 生地同士を擦って洗うのは、繊維を傷つけるので控えること
撥水加工がされた衣類の洗濯(洗濯機編)
「撥水加工」が施されている衣類の中には、「桶or洗濯機+数字マーク」が表示されている衣類もあります。
このマークがあるものは「洗濯機」で洗うことができる衣類です。
以下は「撥水加工」が施された衣類を「洗濯機」を用いて洗濯する手順です。
【洗濯機使用】
- 衣類のファスナー、ボタンを閉じ、畳んで洗濯ネットに入れる。
- 洗濯機に入れて、「オシャレ着用中性洗剤」または「専用洗剤」を適量入れる。
- 「手洗い洗濯(ドライコース」」を選択してスタートを押す。
- 「すすぎ」を終え、「脱水」の工程に入る前に洗濯機を停止して衣類を取り出す
- バスタオルで包んで軽く水気を切る。
これで「洗濯機」を用いた洗濯は完了です。
- 洗濯機を使用するとき、「洗濯ネット」が必須。
- 洗濯機による「脱水」は摩擦が高いため、衣類そのものを傷つける恐れがある。
- 衣類によっては、水を多く含まないものがあるので、脱水そのものを停止しても問題はない。
洗濯後の干し方
洗濯し終えた衣類を干すときは、「風通しのいい日陰」で干します。
直射日光が差す「日向」で干すと、衣類の生地表面を焼くほか、変色や黄ばみなどを発生させる可能性があります。
また、水滴が滴る場合は浴室乾燥機の「冷風」を用いて干す手もあります。
リュックや小物を洗う場合
リュックや小物にも汚れや汗によるニオイが付いていますので、定期的に手入れしてあげないと不衛生です。
これらを洗濯する場合は、「部分洗い」で洗濯するのがおすすめです。
ぬるま湯に中性洗剤を溶かした洗濯液に乾いたタオルを浸して、汚れ部分を優しく洗ってあげるだけできれいになります。
また丸洗いする場合は、取り外せるパーツすべてを取り外して、「手洗い洗濯」または「洗濯機の手洗いコース(ドライコース)」で洗濯します。
撥水加工された衣類の洗濯ポイント

ここからは「撥水加工」が施された衣類洗濯のポイントです。
汚れたらすぐに拭き取る
「撥水加工」が施された衣類を定期的に洗濯すれば、施された加工効果は徐々に低下します。
少しでも長く加工効果を持たせるには、汚れたらすぐに拭き取ることです。
「撥水加工」には水だけでなく、汚れをも弾く効果があります。
付き立ての汚れならば、固く絞ったタオルで優しくふき取れば簡単に汚れを落とせます。
こまめな手入れが撥水加工の寿命を延ばす
「撥水加工」が施されている衣類も物である以上、使用すればするほど劣化します。
長く使用すれば当然繊維はすり減り、至る箇所でボロや変色が見られますが、衣類にとって大きな負荷となるのが「洗濯」です。
たとえば一度の洗濯で汚れを落とせなかったという理由で、もう一度洗濯機にかけるのはおすすめしません。
少しでも衣類の寿命を長く保つならば、汚れたらその都度、「部分洗い」をするのがおすすめです。
「手洗い洗濯」や「洗濯機による洗濯」のように全体を洗うわけじゃないので、衣類全体にかかる負荷が少なく、撥水加工も長持ちします。
また毎シーズンごとに1~2回ずつ撥水加工を施すことで、効果そのものを持続できます。
柔軟剤や漂白剤の使用は控える
衣類洗濯をするとき、シミになった汚れを落とす「漂白剤」や着心地をよくする「柔軟剤」を入れて洗濯する方がいます。
「撥水加工」が施されている衣類を洗濯するときは、これら洗剤の使用は控えましょう。
理由は、生地表面にコーティングされた「撥水加工」を低下させるためです。
また「中性洗剤」の中には「柔軟剤」や「漂白剤」などが配合されているものもありますが、同様の理由で洗濯する際は、配合されていない物を使用しましょう。
脱水はしない
「撥水加工」が施されている衣類を「脱水」する必要はありません。
そもそも「撥水加工」が施されているので、衣類そのものが濡れていません。
むしろ脱水をすることによってかかる「遠心力」が生地を傷める原因になります。
おまけに、速乾性も高いので、洗濯後はバスタオルに包んで水気を切る程度で十分です。
撥水加工効果がなくなったら

最後は自宅で簡単「撥水加工」が低下・なくなったと感じた時にする「撥水効果の回復方法」です。
熱を加える
「撥水加工」が施された衣類を洗濯すれば、生地表面にコーティングされた「撥水加工」が低下します。
「コーティングが洗い流された」というより、「撥水基が寝込んで一時的に効果がなくなった」だけです。
この寝込んでしまった撥水基を立たせるには、「熱を加えて立たせる」のが効果的です。
【熱を加える方法】
- 乾燥機に10~20分入れる
- 当て布を敷いてアイロンをかける
- ドライヤーの温風を当てる
ただし「ナイロン」などの熱に弱い素材で仕立てられた衣類に、コーティングされた撥水基を起こす場合は、冷風を当てるなどの方法が有効です。
撥水加工を施す
熱を加えるほかにも新たに「撥水加工を施す」という手もあります。
【撥水加工を施す方法】
- スプレータイプのものを吹きかける
- ウォッシュインタイプの撥水剤を使用する
の2パターンがあります。
「スプレータイプの撥水剤」を使用する場合、手間をかけることなく吹きかけるだけで「撥水加工」を施せますが、ムラが生じやすいです。
対して「ウォッシュインタイプの撥水剤」は、手間をかける分、全体にムラなく撥水加工を施せます。
こちらのパターンで「撥水加工」を施す場合の手順は、以下のようになります。
【ウォッシュインタイプの撥水加工手順】
- ボウルまたは桶にぬるま湯を張ってその中に撥水剤を適量入れ、よくかき混ぜる
- 衣類を畳んで、撥水液の中に10~20分ほど浸す
- すすぎを行わず、洗濯機で10秒ほど脱水する
- 脱水後は、洗濯表示に従って乾燥させる
以上で、「撥水加工」が完了となります。
とはいえ、すべての衣類に対して「撥水加工」が施せるわけじゃありません。
【撥水加工ができないもの】
- もともと撥水加工がされていない/効果がないもの
- 通学用の雨具など
のアイテムには施せませんのでご注意ください。
専門のクリーニングに依頼
「自分でやるのが手間だ」
「忙しくて時間がない」
という方は、クリーニングに依頼するのがおすすめです。
クリーニングに出せば、衣類の洗濯はもちろんのこと、熱処理と並行して撥水加工をも施してくれます。
ただし店舗によって、加工方法が異なるのでご注意ください。
まとめ~定期的な手入れで撥水加工を維持しよう~

以上が、「撥水加工」が施された衣類の洗濯方法・干し方のご紹介でした。
今回の内容をまとめると以下の通りになります。
- 「撥水加工」は「水を弾く」効果がある
- 通気性・透湿性が高い反面、一定量以上の水を浴びると効果がなくなる
- 洗濯前に必ず「洗濯表示」を確認すること
- 洗濯後はバスタオルで軽く水を切ってから陰干しする
- 脱水は生地を傷めるので使用しない
- リュックや小物は、「部分洗い」で汚れを落とす
- 汚れたらその都度、部分洗いする
- 効果がなくなったら、熱を加える
洗濯すれば「撥水加工」は弱くなると思われていましたが、一回の洗濯で加工がなくなることはまずありません。
一時的に加工そのものが弱まっているだけなので、ドライヤーや乾燥機などで「熱」を当て得れば、すぐに回復します。
しかし、回数を重ねれば撥水効果が弱まるのは事実です。
少しでも撥水効果を持続させるためにも、汚れたらすぐに汚れを拭き取るや、ワンシーズンごとに撥水加工を施すなどして、効果そのものを維持しましょう。